FAB 3D CONTEST 2021
審査結果報告
最優秀賞
光を操る窓 Akarino 〜あかりの〜
松木 工弥 さん
優秀賞
個人部門
ALWAYS 〜大切なペットとずっと一緒に〜
高石 侑汰 さん
チーム部門
「植彩」~身のまわりに緑を〜
好きなかたちに植物を飾る・育てる 新しいスタイル
チーム名: 緑化委員
特別賞
個人部門
まえからトレイン〜おにぎりを乗せた夢の特急列車〜
柳瀬 真里 さん
チーム部門
ウイタツ〜ウイルスから身を守ろう〜
チーム名: Seahorseふたば
教育施設賞
生ごみプレス|コーヒーかす消臭ポット|ベッドサイドライト
epis わかば深圳教室
スポンサー奨励作品
三菱ケミカル 株式会社
はじめてのマイ・コンポスト
一瀬 輝日 さん
株式会社 グッデイ
土にかえる蛙
高橋 楽音 さん
最優秀賞

光を操る窓 Akarino 〜あかりの〜
高校3年
松木 工弥 さん
講 評
欄間に着想を得るといった歴史的な文化資源を、デジタルテクノロジーとを組み合わせてアップデートしたことに加えて、新素材の活用アプローチとして、部屋を明るく、外からの視界を遮ることが両立可能な今までにないアイデアであることがとても素晴らしい。さらに、磁石を使ってカスタマイズ可能にしたことで、様々な場所に適応できる柔軟さも感じられます。デザイン性や3Dプリンタだけの表現だけではなく、光学・電子工作など幅広い分野にチャレンジし、複数のモデルの実験も行いながらアイデアをまとめ上げ、製品の品質という観点でも完成度の高い作品です。今回のアイデアが、Breathable(呼吸可能)あるいはexpandable(拡張可能)な素材、またはデータを公開するなど、どのように社会で成長するアイデアにできるかなど今後にも期待が膨らみます。
優秀賞
個人部門

ALWAYS 〜大切なペットとずっと一緒に〜
高校2年
高石 侑汰 さん
講 評
今回の素材を使った理由が作品そのものに内在されており、本来自然に還るべきものは何かを塾考した上で資源の再現性と循環を捉えて捉えてアイデアを出している着眼点の視座の高さが素晴らしい。発想の起点として循環型社会を自分事し、利用者となる人の思いや絆にまで踏み込んで検討している 。今後期待することとして、モノの完成度を高めることに囚われすぎず、アイデアの源泉となった発想の社会検証を試みるとさらに様々な繋がりや広がりが出てくると思います 。ペットを再現するという観点だけでなく、想いをカタチにする上での改善にトライしてもらいたいです。継続していくことで展開性が考えられるため期待したい。
チーム部門

「植彩」~身のまわりに緑を〜
好きなかたちに植物を飾る・育てる 新しいスタイル
チーム名: 緑化委員 / 松木工弥 さん
講 評
植物を入れる器に感覚的な楽しさも加わり新たな可能性を示唆している。 ツールの機能をうまく活用したデザイン性の高さに加え、ジャイロイドという出力を用い3Dプリンタだからこその構造と、日常にあるものを掛け合わせている点。植物を飾って、見て、育てて、土に返すまで循環や楽しさが両立し、一連の流れを体験できる作品になっている。今後期待することとして、作ったものを他の人にも使ってもらい、使ってもらう側からのフィードバックを得て更なる改善にトライしてもらいたい。また、本来狙っていた癒しの効果などもセラピストとのコラボレーションなどで検証する展開もあるかもしれない。このような形状にはいろいろな応用があり得ると思うので、さらに別の可能性を探ってみると面白そう。
特別賞
個人部門

まえからトレイン〜おにぎりを乗せた夢の特急列車〜
高校2年
柳瀬 真里 さん
講 評
食品ロスという社会テーマに正面から向き合い、コンビニエンスストアへのインタビューや完成品のレビューを行なっていることでモノの完成度のみならず、実際に活用するレベルでの仮説・検証ができている。 積極的に現場に出向き、普段なら得難い視点(コンビニの経営者)を獲得し、またものづくりのプロセスに他者を巻き込んでいる。ユーザーの心理に向き合えただけでなく、実際に使ってもらう人の声も大事にしながら試行錯誤を繰り返し、社会実装への可能性を高められた点はとても素晴らしい。今後期待することとして、地域を巻き込みながら作品や今後の継続的な取り組みを通じて、食品ロス(てまえどり)への重要性をより多くの人に認知、共感、共鳴できる機会創出につなげてほしい。
チーム部門

ウイタツ〜ウイルスから身を守ろう〜
チーム名: Seahorseふたば
高校2年 / 1年
宮副叶和子さん 松尾佳南子さん 臼田樹乃香さん
講 評
作業を進めていく中で素材の弱点発見や、思うようにいかない場面など様々な課題が発生してもチームメンバーお互いの特技を見出し、補いながら作品を完成している制作プロセスが記述され、チームの中でアイデアを形にする大変さを克服できたことがきちんと伝わってきました。一つ一つの要素に大きな新鮮味はないものの、消毒液入れと非接触型のドアオープナーという組み合わせが、ありそうでない印象を受けました。 作ったからこそ見つけられた更なる課題や、やりきれなかった点にまたトライしてみてほしい。
教育施設賞

生ごみプレス|コーヒーかす消臭ポット|ベッドサイドライト
epis わかば深圳教室
講 評
多くの生徒達にデジタルファブリケーションや環境問題などを身近なものとして捉えられるような取り組みが良かったです。VRを使った検証やステップごとに動画を撮影していたりと、他の教育関係者やファシリテーターにも参考となるドキュメンテーションの質が非常に高かったです。3Dプリンタを活用し新しい素材に触れ、教育現場で広く知見を得る活動を行った点はとても素晴らしい。今後期待することとして、Fabbleから読み取れるプロセスが構造的だったため、もう少し生徒たちの主体性が発揮され、生徒たち自らがチームとなり検討し作業分担して作品を作り上げる取り組みにもトライしてみてほしい。今後に期待しています。
スポンサー奨励作品
三菱ケミカル株式会社

はじめてのマイ・コンポスト
高校2年
一瀬 輝日 さん
講 評
FORZEAS™フィラメントの特徴である生分解性が、どんなプロダクトで最も生きるか?という問いを、周囲へのヒアリングを通じ、専門性の高いレベルまで踏み込んで調査されていた点に感銘を受けました。ただフィラメントを使いこなすだけでなく、そもそも生分解とは?コンポストとは?という点に立ち返って調査と検証をされていたことで、この作品がより説得力のあるものに仕上がっていると思います。造形の難易度が高かったにもかかわらず、地道な出力条件の最適化や冷却の工夫により目的形状の出力を達成されており、ピュアなモノづくりへの熱意もとてもよく伝わってきました。本コンテストを通じて考えたことや学んだことを生かし、これからの循環型社会の中で素材はどうあるべきかを、さらに探求していっていただけたらと思います。我々三菱ケミカルも、DURABIO™やFORZEAS™をはじめとした様々な素材やソリューションを通じて、世の中の「KAITEKI」に貢献していきます。
三菱ケミカル株式会社
株式会社グッデイ
審査委員長総評
3Dプリンタの可能性を引き出す要素は大きく2つある。ひとつは、コンピュータ上でモデリングする「デジタル3Dデータ」で、 もうひとつは、3Dプリンタに投入する「材料」である。STEM教育・デジタル教育のなかで3Dプリンタが注目されたのは前者の文脈だが、 3Dプリンタの材料研究に大きく脚光があたったのはここ数年のことである。
世界的なプラスチックへの問題意識を受けて、環境負荷の少ないバイオマスプラスチックや生分解性プラスチック、 あるいはリサイクルプラスチックなどの新素材が多数開発され、それらの素材の可能性を引き出しながら新しいアイディアを生み出すツールへと、 3Dプリンタのとらえ方が変わってきているのである(私個人は、リサイクル材料24.5トンを用いた東京五輪オリンピック・パラリンピックの3Dプリント 表彰台の設計統括をつとめた)。
今年のテーマやコンテストの体制は、こうした世界的な動向を受けたものとした。 そして過去5年間のコンテストの方針と同じように、「大人が知っている正解を子供たちが学ぶ」のではなく、「大人でも正解のわからない本質的な問いを、 年齢は関係なく一緒に考える」場に向けるようにした。これはつまり大学や企業でいうところの研究の営みである。コンテストはその機会となる。
よく考えれば、家庭用3Dプリンタが普及するに伴って、「プラスチック加工」が身近になったのだと思う。これまでよく学校の図工で扱われてきた、 身近な加工の材料は、木や紙や布だが、「プラスチック」を家で成形したことのある人はほとんどいなかったはずだ(あるとしたら、プラ板に字を書いて オーブンで膨らませるくらいだろうか)。自分の手元で扱われる材料が、どのようなかたちでどのように社会に展開されれば、これからの資源循環型社会に つながっていくか、それを各自が具体的に考え、アイディアをかたちにすることが広がっていった。日本だけではなく、海外からも参加があり、 これからの大きな展開が期待できる結果となった。
今年のコンテストは、新たな1歩である。これからSDGS達成目標の2030年までにやるべきことはたくさんある。まずは、 「3Dプリンタ教育」と「プラスチック教育」がセットになった、創造教育であり環境教育でもあるような 新たなカリキュラムを構想していきたい。そして、ものをつくるだけでなく、もののライフサイクルの全体を俯瞰して考えられるようなリテラシーを、これからの 当たり前として展開していけたら、と考えている。
10年後の未来を考える営みを、10年後に社会に出るであろう今はまだ若い世代と一緒に考える。 ここにかかわることが、すべての世代や立場の人にとっての学びとなるようなコンテストを目指していければと考えます。 来年以降のコンテストにも、みなさまのご参加とご協力をどうかお願いいたします。

田中浩也
ファブ3Dコンテスト 実行委員長・審査委員長
慶應義塾大学 SFC研究所 ファブ地球社会コンソーシアム 代表理事
慶應義塾大学環境情報学部教授、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ代表。博士(工学)。デザインエンジニア/ソーシャルエンジニア。専門分野は、デジタルファブリケーション、3D設計/生産/製造システム、創造性の科学と文化およびその支援。モットーは「技術と社会の両面から研究すること」
表彰式
11月23日(火•祝) オンラインで開催いたしました
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました
慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアム主催
未来を創造するファブ人材発掘「ファブ3Dコンテスト2021」表彰式
当日の様子を録画したものを公開いたします
(再生時間:1時間51分37秒)
日時:2021年11月23日(火・祝) 14:00〜16:00
第1部 表彰式
開会 / ご挨拶
ファブ3Dコンテスト2021 表彰式
審査プロセスのご説明
第2部 特別講義
「3Dプリンタを通じた新しいプラスチック循環社会へ向けて
〜東京2020オリンピック•パラリンピック表彰台制作プロジェクトを通して〜」
ファブ3Dコンテスト 実行委員長・審査委員長 田中浩也
会場:Zoomオンラインミーティング
FabCrossに表彰式の様子を記事として掲載いただきました。ぜひご覧ください。