FAB 3D CONTEST 2020
審査結果報告
応募総数:個⼈部⾨ 13件
チーム部⾨ 2件
最優秀賞
1作品
【製作⽇記】「Pao」〜⼆⼈がグッと近づく楽器〜 [滑川 寛]
優秀賞
1作品
PETボトルキャップナー [吉澤 流来]
特別賞
2作品
ComClothes 〜つなげる、服も、"まち"も〜 [佐藤 美桜]
すなふる 〜砂浜をきれいに〜 [松⽊ ⼯弥]
コラボレーション賞
2チーム
チーム:外DE隊
チーム:かいてきマスク
最優秀賞
1作品
【製作日記】「Pao」~二人がグッと近づく楽器~
鎌倉学園高等学校 2年
滑川 寛 さん
講 評
コロナ禍におけるコミュニケーションの在り方として、インサイトを探るところからアイデア創出までの過程が素晴らしい。自分自身の体験から、人と人とのつながりに着目し、何故これを作るのかを明確にした上で、コミュニケーション方法にまで視点を広げ取り組めており、デザイン思考をしっかり実践していたこと。そしてそのプロセスが明確にドキュメンテーションされていたことで、Learn Make Shareのサイクルが非常にきれいに回っていることが高く評価できる。技術的にも高度でよく練られており、気軽に遠隔セッションを楽しむ楽器の 可能性を感じさせる。使ってももらって終わりでなく、会ってくっつけたいという未来に対するストーリーも良かった。
優秀賞
1作品
特別賞
2作品
オンラインチーム部門
例年と異なり「FAB QUEST」というテーマの元、全国からチャレンジャーを募り、8〜9月にかけて5回のオンラインセッションを開催し作品を制作していきました。参加者はオンラインのみで全てのセッションを行い、チームに分かれてアイディアを出し、作品制作、発表を行いしました。コロナ禍で混乱する状況下でもチャレンジを続け、アイデアを形にしていきました。チーム部門制作発表後、ファブ3Dコンテスト審査委員会により検討を行い、下記の参加者にコラボレーション賞を授与することを決定しました。なお、チーム制作進行に大いなる示唆を与えてくれた下記のアドバイザーを、ベストアドバイザー賞として表彰いたします。
コラボレーション賞
2チーム
チーム:かいてきマスク
Miwa (中学2年)
Iku (中学2年)
Koya (高校2年)
講 評
制作プロセスの中でアイディアを外部化するために、自発的に粘土を取り入れ検証ツールとして活用したことで、3D CADでプロトタイプしなくてはいけないという前提から解放され、チーム全体の発想が広がり、メンバー間のコミュニケーションが促された点は特筆に値する。オンラインというリアルと比して限定的なやり取りの中でも、立体物をお互いに手に取ることで発想が豊かになることが目に見えて体感されたタイミングだったように思う。これからのオンラインでのコラボレーションの在り方に大きな示唆を与えてくれたことに感謝したい。
ベストアドバイザー賞
岡 佑樹 さん
サポートチーム名:かいてきマスク
所属:北海道栗山町地域おこし協力隊
土山 俊樹 さん
サポートチーム名:外DE隊
所属:北海道栗山町地域おこし協力隊
講 評
チャレンジャーの主体性を引き出すための様々なトライアルを積極的に行なっていた。特にプロジェクトマネジメント(いつまでに、何を誰がやるべきか、何をやらないかの線引き) を、アドバイザーは、チャレンジャーの自覚的、無自覚的な特性を見極めながら進めていく必要がある。適度な距離を保ちながら、アドバイザーに「頼む」のではなく、「頼る」関係性をチャレンジャーと構築する事の意味と価値を実践を通じて提示してくれた意義は大きい。
表彰式
2020年11月22日(日) オンラインで開催いたしました
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました
慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアム主催
未来を創造するファブ人材発掘「ファブ3Dコンテスト2020」表彰式
当日の様子を録画したものを公開いたします(再生時間:1時間)
開会挨拶 慶應義塾大学 SFC研究所 ファブ地球社会コンソーシアム代表理事 田中浩也
スポンサー企業ご紹介
コンテスト概要説明
審査プロセス説明
表彰 賞状・副賞授与
個人部門 最優秀賞 / 優秀賞 / 特別賞
オンラインチーム部門 コラボレーション賞 / ベストアドバイザー賞
閉会の辞 田中代表理事 講演
fabcross様にてオンライン表彰式の様子を掲載いただきました
https://fabcross.jp/news/2020/20201124_fab3dcontest2020_final.html
審査委員長総評
個人的な話になるが、2020年は、私の人生で2度目の大激変の年であった。1度目は1995年である。当時私は大学1年から2年に上がるタイミングで、その年に、阪神淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件、Windows95とインターネット元年という3つの大きな社会的事件を経験した。そして私自身、阪神淡路大震災については、神戸まで炊き出しのボランティアに出かけ、インターネット元年については、はじめてHTMLを覚えて自らのホームページを立ち上げたりした(オウム真理教についてはここでは省略する)。その年、社会も動き、そして、行動することを通して、自分自身も大きく変わったのだという確かな感覚が20年以上過ぎた今でも残っている。
なぜこの話から始めたかといえば、「大きく社会が動いた年」の記憶は、「そのときに自分はどう動いたのか、何をしたのか」という記憶がセットになってはじめて、強く後まで残り続けるものだということを確認したかったからだ。2020年がコロナの年であったことが、世界史に残るのは必然だが、肝心なことは、そのときに「自分は」何を行ったか、である。2020年という年に、「自分が」一生懸命取り組んだひとつのイベントとして、このファブ3Dコンテストが、記憶に残り続けるものであれば嬉しい。
コロナ禍では、3Dプリンタが実際に大きく役に立った。3月から6月まで、世の中に「ファイスシールド」が枯渇している期間、142,085個ものフェイスシールドが3Dプリンタでつくられ、病院や医療機関を中心に配布された。我々の調査では、今回もっとも「改変」が行われた3Dデータは、ファブラボ平塚主宰で神奈川大学の道用先生による「Doyo Model」だった。そして「何を改変したのか」というポイントを、機能性、意匠性、生産性、装着性の4項目で整理して図化するなどの試みによって、3Dデータを共有するオープンデザインの多様な営みが浮かび上がってきた。詳しい分析結果はサイトに譲るが、「有事において」、「世界とつながりながら」「地域で」「迅速に」ものづくりをする手段としての、デジタル・ファブリケーションの有効性は、確認できたように思う。
https://coi.sfc.keio.ac.jp/faceshield.html
夏以降は、フェイスシールドの量産体制が整い市場に出回りはじめたことによって、3Dプリンタの役割は一定の収束を見た。しかし同時に、コロナが長引きはじめたことを受けて、いかにしてコロナと共存しながら私たちの生活を再調整・再構築するかという課題が、大きく浮かび上がってきた。特に、自宅に居続ける「ステイホーム」の限界を誰もが感じ、「まち」をどのようにして維持・持続させられるか、が社会全体の課題となった。そこで、「ファブのあるまちづくり」はどのように貢献できるか。今回のファブ3Dコンテストでは、物理的な感染対策から、精神的な繋がりの確認まで多種多様なアイディアが集まったのだった。
COVID-19は、世界がひとつのウィルスに同じように向き合っていながらも、その対応・対策は、国によって、自治体によって、それぞれ違い、個別のカスタマイズやローカライズが必要である、ということを、世界中のすべての人々に強く認識させてくれた。だからこそ、自分たちの住む「まち」をもう一度よく考えることも始まるだろうし、同時に「他のまち」についてよく知ろうという気持ちの源泉にもなるはずだ。このように変わりゆく世界認識を、どのように、新しいものづくりにつなげていけるだろうか。
来年以降、ウィズコロナ社会からポストコロナ社会へと移行していく社会のなかで、「まちづくり」と「3Dプリンタ」を結び付けた、このユニークなコンテストの価値は、より一層社会に広がり伝わっていく必要があると考えています。関係者の皆様には、今後ともご支援・ご協力のほどをお願いさせていただきたく思います。
田中浩也
ファブ3Dコンテスト 実行委員長・審査委員長
慶應義塾大学 SFC研究所 ファブ地球社会コンソーシアム 代表理事
慶應義塾大学環境情報学部教授、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ代表。博士(工学)。デザインエンジニア/ソーシャルエンジニア。専門分野は、デジタルファブリケーション、3D設計/生産/製造システム、創造性の科学と文化およびその支援。モットーは「技術と社会の両面から研究すること」